BLOG 美術探訪
2025.09.17
銅版画のパイオニアとして大きな足跡を残した◆駒井哲郎◆
皆様、こんにちは。ミライカ美術の岩永です。
先日、家族で福岡市内の大型商業施設にある職業体験施設に行ってきました。
常に50社、70種類くらいの体験があり、子供たちがリアルな体験をすることが可能です。
内容も配慮されていて、体験できる中学生までの子供全員が楽しめる構成になっていました。
私が子供の時はこのような施設がなかったので、様々なことを知ることができる現在の子供が羨ましく感じました。
さて、今回ご紹介するアーティストは駒井哲郎です。
戦後の日本において銅版画の芸術的地位を確立させた先駆者として知られる駒井哲郎。
幻想的な風家や繊細なモノクローム表現で知られ、いまなお多くの人々の心を惹きつけています。
1920年に東京で生まれた駒井哲郎は、東京美術学校(現在の東京藝術大学)で油彩画を学びますが
戦後まもなく銅版画(エッチング)の技法を習得します。
日本ではまだ馴染みの薄かった西洋技法を取り入れながら、独自の世界観を表現しました。
一貫してモノクロームで、幻想的な空間や物質、抽象的な風景を描いています。
特に代表作として知られているのが、「束の間の幻影」や「クラブのA」、「食卓」シリーズなどです。
深い陰影で構成された画面からはどこかシュルレアリスムを感じさせます。
一方で詩人たちとの交流を積極的に行っており、挿絵や装幀も数多く手掛けています。
心にしみるエッチング作品を多数残し、長谷川潔、池田満寿夫とともに銅版画の魅力を人々に知らしめた功績は大きなものがあります。
駒井哲郎の創作活動は、個人の内面世界を静謐な表現で可視化する試みだったといえるでしょう。
彼の作品は派手さや即時的なインパクトよりも、じわじわと染み込むような余韻と深みがあります。
版画というメディウムの特性を生かし、光と影のバランス、線の強弱
エッチングによる質感などが高次元で融合しており、まるで詩のような静けさを持つ作品世界を築きました。
また、駒井哲郎は教育者としても知られ、東京藝術大学で長年にわたって後進の育成に努めました。
彼の指導を受けた多くの作家が日本の版画界を支えており、教育者としての功績も見逃せません。
その姿勢は、一作品ごとの完成度に対するこだわりや、芸術に対する誠実な姿勢からもうかがえます。
代表作の一つである「束の間の幻影」は、空間の揺らぎや儚さを見事に描き出しており
無機質な物体と柔らかい光のコントラストが静かな感動を呼び起こします。
また「クラブのA」は、トランプの意匠を借りながらも、どこか神秘的な象徴性を持たせた作品で、彼の抽象表現の魅力が凝縮された一点です。
さらに「食卓」シリーズでは、日常的なモチーフを通して時間の停滞や記憶の断片を表現しており、観る者の想像力を喚起する力に満ちています。
市場における駒井哲郎の評価は、近年ますます高まりを見せています。
特に保存状態の良い初期作品や、代表作に位置づけられるシリーズ作品は人気が高く
国内のオークションでは数十万円から百万円台での取引も見られます。
たとえば「束の間の幻影」などの作品は、過去の取引で90万〜150万円前後の落札実績があり
今後もその希少性と美術的価値から安定した需要が見込まれています。
駒井哲郎作品の人気は日本国内にとどまらず、海外でも評価されつつあります。
特にモノクローム表現や静謐な構成は、欧米のミニマルアートや精神性を重んじるコレクターの関心を引きつけており
国際的な展覧会に出品される機会も増えています。
こうした評価の高まりも、買取市場における相場の上昇に大きく影響しています。
ミライカ美術では東京店、大阪店、福岡店より駒井哲郎の作品の買取を承っております。
ご自宅に眠っている銅版画が思わぬ価値を持っていることもありますので、お気軽にお問い合わせください。
査定にあたっては、作品のエディション(限定部数)やサインの有無、保存状態、共箱や額装の有無などが重要な評価ポイントとなります。
また、制作年やテーマ、過去の展覧会出品歴なども査定額に大きく影響します。
当社ではこうした各要素を丁寧に確認し、美術品の本来の価値を見極めたうえで、適正価格にて買取いたします。
「これは本物なのか」「価値があるのかわからない」といったご不安がある場合でもご安心ください。
ミライカ美術では美術市場の専門知識をもとに、誠実にご対応いたします。
査定は無料で、LINE査定やメールでの画像査定も可能で、現物を拝見する前におおよその価格感を知ることもできます。
銅版画は、他の絵画ジャンルと比べても保存状態が作品価値に大きく関わる繊細なジャンルです。
飾らずに長期間しまわれていた作品が、意外にも美しい状態を保っていることもあります。
反対に、湿気や光による退色、額装の劣化が見られる場合には、評価に影響する場合もございます。
駒井哲郎の作品は、戦後日本の芸術史を語る上で欠かせない存在です。
その静かな佇まいの中に込められた深い精神性と造形美は、時を経ても色褪せることなく、今もなお人々の心を打ち続けています。
コレクターの方はもちろん、ご家族から受け継いだ作品をどうすべきか悩んでいる方も
まずはお気軽にご相談ください。
私たちミライカ美術が、次なる所有者への橋渡しをお手伝いいたします。